北朝鮮が国連安全保障理事会の決議に反して短距離弾道ミサイルなどの発射を連続して強行していることに対し、日本政府はあえて抑制的な対応にとどめている。日本人拉致問題の解決に全面協力を表明し、米朝対話を重視するトランプ米大統領への配慮があるからだ。一連の発射による直接的な被害は確認されていないが、日本の安全保障を脅かす北朝鮮の異常な軍事的挑発に政府は危機感を強めており、両にらみの対応を迫られている。
「強固な日米同盟のもとで高い緊張感をもって、高度な警戒監視体制を維持し、国民の安全を守るために最善を尽くす」。菅義偉(すが・よしひで)官房長官は6日の記者会見で、相次ぐ北のミサイル発射に対し、こう強調した。安倍晋三首相は同日、官邸で国家安全保障会議(NSC)を開くなど情報の収集と分析を急いだ。
北朝鮮の飛翔(ひしょう)体発射は7月25日から8月6日までの約2週間で計4回に及ぶ。政府は7月25日の発射は短距離弾道ミサイルと断定したが、菅氏は同日の記者会見で北朝鮮への批判や抗議を控えた。平成29年11月末の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射後に「度重なる挑発行為を断じて容認できない」と強く非難したのとは対照的といえる。ミサイルの種類や落下地点がICBMと異なることに加え、「(5日に始まった)米韓合同軍事演習への牽制(けんせい)」(政府関係者)とみているからだ。
さらに、トランプ氏が米朝対話を維持したい思惑からミサイル発射を“黙殺”しており、政府高官は「米国に拉致問題のことを言ってもらっている中での発射だ。『撃った、撃った』と騒ぐだけではいけない」と打ち明ける。
ただ、自民党内では政府の対応に不満が強まっている。二階俊博幹事長は6日、党本部の会合で「政府はこの事態をどう意識しているのか」と苦言を呈した。二階氏は5日にも「差し迫る危機感を(政府は)傍観している」と批判している。北の軍事的挑発に毅然(きぜん)とした対応を示さなければ、足元の自民党内から厳しい圧力にさらされかねない。(原川貴郎)
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